なぜ缶詰は腐らない?:120℃4分が作り出す安全な世界

食品衛生

スーパーで手軽に購入できる缶詰。賞味期限が長く、常温で保存できるため、防災食としても重宝されています。しかし、なぜ缶詰は腐らないのでしょうか?その秘密は、緻密な加熱殺菌プロセスにあります。

缶詰が腐らない理由は、大きく分けて以下の3つの要素が関係しています。

  1. 密封: 缶詰は密閉された容器であるため、外部から空気中の微生物や菌が侵入することがありません。
  2. 加熱殺菌: 缶詰は高温高圧で加熱殺菌されるため、食品の中に存在する微生物や菌が死滅します。
  3. 酸素の遮断: 密封された缶詰内では酸素がほとんど存在せず、好気性菌の繁殖が抑制されます。

ボツリヌス菌に注目!

食品の中で最も恐ろしい菌の一つに、ボツリヌス菌が挙げられます。毒性が非常に強く、死者も出ています。この菌は、生きるのが難しい環境になると芽胞と呼ばれる耐久性が高く、簡単には死なない構造になります。酸素が少ない環境で強力な神経毒を産生し、食中毒の原因となります。缶詰の製造過程では、特にボツリヌス菌の死滅に重点が置かれています。

120℃4分という魔法の数字

一般的に、缶詰の加熱殺菌は120℃で4分という条件で行われます。この温度と時間が、ボツリヌス菌をはじめとする多くの微生物を死滅させるのに十分な条件とされているのです。

  • 120℃: この温度は、ボツリヌス菌の芽胞(休眠状態の菌)を死滅させるために必要な温度です。
  • 4分: この時間は、すべての菌を死滅させるために必要な時間です。

120℃4分が選ばれる理由

  • ボツリヌス菌の死滅: 120℃4分の加熱で、ボツリヌス菌の芽胞を確実に死滅させることができます。
  • 栄養素の損失の抑制: 過度な加熱は、食品の栄養素を破壊してしまいます。120℃4分という条件は、栄養素の損失を最小限に抑えながら、十分な殺菌効果を得られる最適な条件と考えられています。
  • 食品の品質保持: 高温で長時間加熱すると、食品の風味や食感が損なわれてしまいます。120℃4分という条件は、食品の品質をできるだけ保ちながら、安全性を確保できる条件です。

実際の温度は120℃4分で加熱していない!

実は120℃4分間で加熱している缶詰は少ないです。それだと菌が死なないじゃん、と思う人もいるかと思います。これは120℃4分間に相当する加熱であれば菌は死滅するからです。例として100℃で加熱したら120℃の0.5分に相当するという考え方です(実際には0.5分相当ではないので注意!)。実際には90℃で30分間で加熱するという会社もいます。では、なぜ120℃4分間で加熱しないかというと、風味と味が落ちてしまうからです。味と風味、衛生対策のバランスをとって加熱時間を決めています。

ただし、注意すべき点も

  • 缶の損傷: 缶に傷や凹みがある場合は、中身が汚染されている可能性があるため、食べないようにしましょう。
  • 賞味期限: 賞味期限を過ぎた缶詰は、品質が劣化している可能性があります。
  • 異常な臭いや変色: 開缶時に異常な臭いや変色が見られる場合は、食べないようにしましょう。
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まとめ

缶詰が腐らないのは、緻密な加熱殺菌プロセスによって、食品の中に存在する微生物や菌が死滅し、安全な状態が保たれているからです。特に、ボツリヌス菌のような危険な菌に対しても、120℃4分という加熱条件によって効果的に対策が施されています。

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